数十年後の未来で、同性カップルに「レズビアンって何?」って質問されるのが夢【LGBTの今を知りたい Vol.2~牧村朝子INTERVIEW~】


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歴史の授業やTV、書籍などを通して過去を振り返ったとき、ある種の差別や偏見が昔は当たり前であったことに驚かされることがある。長い歴史において人間社会には、人種や性別による権利の違いをはじめとする多くの凝り固まった価値観が生まれ、あるときは愛する二人を引き離し、そしてまたあるときは誰かを死に追いやってきた。

しかも、悲しいかな差別や偏見というものは、そうした意識を持つのはおかしなことだと唱える人が現れても、すぐには無くなることがないものなのだ。そもそも、人の意識を変えるには大変な根気が必要である。それでも強い意志を持って社会を変えるための行動を取り続ける人たちは、心の内にいかなる想いを抱えているのだろう?

【LGBTの今を知りたい】特集第2回目となる今回は、タレント業、傾聴ボランティア、執筆業を通して、周囲と共有しづらい悩みを抱えるすべての人にメッセージを発信し続けている牧村朝子さんにお話を伺った。

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10歳から12年間、女性を好きになるのは悪いことだと思ってた

――牧村さんがフランス人の同性パートナーと結婚して、結婚後の幸せな様子をブログなどで発信されていることに勇気づけられている人も多いと思うのですが、牧村さんご自身も、同性愛者であることをカミングアウトできずに悩んだ時期がありましたか?

昔はそうでしたね。私は、10歳のときに初めて女の子を好きになったんですけど、それがいけないことだなんてもちろん思っていなかったんで、「◯◯ちゃんのことが好き」って公言してたんです。

ところがある日、当時9歳の弟が私に対して「このレズ!」って言葉を浴びせかけてきたことがあって、9歳の子がそんな言葉を知っててしかもそれを私に向けてくるってことは、もしかして私のせいで弟が「お前のねえちゃんレズ!」っていじめられてるんじゃないかしらと思ったんです。それがきっかけで、「女の子を好きになることは悪いことだから直さないといけないんだ」という意識が芽生え、それから12年間にわたって直そうと努力し続けたんです。

――具体的にはどんなことをしたんですか?

男の人にとってのいい女になるために必要なことですね。モテるメイクしなきゃいけない、料理教室に通って花嫁修業しなきゃいけない......って風に、「やらなきゃいけない」という思い込みにとらわれて、やりたいことをやっていない期間がずっと続いていたんです。でも、12年間それを積み重ねた結果、「やらなきゃいけない」ことしかやってこなかったことに気付き、「やりたいこと」をやろうと思い立ったんです。それで、やっぱり自分は女の子が好きなんじゃないかなと思って、初めてレズビアンバーに行ってみたのが22歳のときです。

――初めてのレズビアンバーはどうでした?

衝撃的でした。言い方が悪いんですけど、初めは動物園に行くような気持ちで行ったんですよ。レズビアンっていう生き物がいて、彼女たちは革ジャンを着て谷間を強調した格好をしていて、ひょっとしたら緊縛姿で天井から吊り下げられてる人もいるかもしれないみたいなイメージを持ってました。でも行ってみたら全然そんなことはなかった。そこで出会ったのは、「これまで同じ電車に乗ってたことがあったとしても、絶対にレズビアンだとは気付かなかったろうな」っていう見た目の人たちでした。知らないうちに、女の子のことを好きな女の子にたくさん出会ってきてたんだろうなって思いました。

――そこで出会った女性からも衝撃を受けましたか?

そうですね。一番衝撃的だったのは、母子家庭で育った同い年の女の子がいたんですけど、その子が、同性愛者であることをお母さんに対してオープンにしてたことです。彼女を家に連れてったり、テレビに好きなアイドルが出たら「◯◯ちゃんまじかわいい~」ってこぼしたりするって話を聞いて、「そういうことしていいんだ!」って気付かされました。人が人を好きになる、ただそれだけのことだったんだ! って。

同性愛者であることを隠していたせいで、親とのいい関係が築けてなかった

――牧村さんご自身も、結婚前にはご家族にご報告されたと思うのですが、そのときは葛藤がありましたか?

ありました。まず、私は自分が同性愛者だってことをずっと押し隠してきたせいで、親とのいい関係が築けていませんでした。なので、同性と結婚するってことを言う言わないの前に、そもそも長いこと親に連絡をとってなかったし、常に親との関係が悪かったんです。親に対してうしろめたい気持ちを持っていることに加えて、「私のことなんにも分かってないくせに分かってる顔するんだな」っていう憤りがあって......。具体的な例を挙げると、15、16歳のころ、ストリートファイターのアニメを観てたら母がにやにやしながら近付いてきて、「朝子もこんなたくましいお兄さんに興味がある年頃になったのねえ」って言い始めて。「私には分かるのよ、うふふ」なんて言ってるんだけど、何言ってんのこの人? 何も分かってないじゃん! って。でもそのときって、自分が女の子を好きだってことを自分でも受け入れられてないので、なんでこんなにむかついているのかという、それさえも分からなくて、うわーってなっちゃって。そんなだったから、親ともいい関係が築けるわけないですよね。

――お母様に打ち明けることになったきっかけは何だったのでしょうか?

ずっと言えなかったんですよね......。でもある日、テレビで「レズビアンです」って言ってる私の姿を母が観てしまったんです。オンエア後、母から、ガラケーの下ボタンを50回くらい押さないと全部読めないような長文メールが届きました。内容から母の混乱ぶりが伝わってきましたね。当時の情勢を織り交ぜながら「大勢の人が亡くなるような災害があったっていうのに、あなたはテレビでレズだなんて言ってていいの?」って。自分の母親が完全に論理を飛躍させて筋の通らないことを言っていることに対する恥ずかしさと同時に、自分は母になんてことをしてしまったんだろうという申し訳ない気持ちとが同時に沸き起こってきました。だって、妻にも常々言われ続けていたんです。「結婚する前に、お父さんお母さんにちゃんと話をするべきだよ」って。テレビを通してじゃなく、まずは自分の口から言うべきだったんです。

――メール受信後、お母様を訪ねたときの気持ちは?

いやー、もう気まずいこと気まずいこと。何から話し始めていいか分からないんですよね。お互いにトピックを持ちだす勇気がなくて全然関係ないことをしゃべるんだけど会話が続かず、気まずい沈黙が続いた後、やっと母が「相手の人も紹介してもらってないし、別れてほしい」って。しかも、「弟もお父さんもかたい仕事してるんだから、家族にレズビアンがいたら仕事面でも2人に悪い影響が及ぶかもしれないから、黙って別れてなかったことにしてちょうだい」とまで言われて、なんと答えたらいいのかすぐには分からなかったです。母親の口から偏見まみれの言葉が出てきたこともショックだったし、家族にレズビアンがいることによって職場で差別受ける世の中だと母親が思ってるのもショックで......。まぁ、そうやって言い合ったおかげで母とより分かりあえましたし、今では妻と私とそれぞれの親兄弟で一緒にバーベキューするくらいの家族仲になれたんですけどね。

――実際のところ、異性愛者に対する偏見の度合いって世代によって違うんでしょうか?

最近、毎日新聞が同性婚に対しての世論調査をやってたんですけど、やっぱり上の世代のほうが、反対派が多いという結果が出てましたね。1960年代にアメリカで同性愛の権利運動が盛んになって、その後、日本にもその動きが広まったんですけど、そういったことの積み重ねで変わってきたんだと思います。それともう一つは、例えば20代より60代のほうが既婚率って高いですよね。で、既婚者にとっては、何十年も異性との結婚生活を続けてきた自分自身の生き方を否定されるような気がするっていうのもあると思うんです。

――世代によって意識が違っても、やはり、カミングアウトしたほうがいいかは人それぞれですか?

そうだと思いますね。まず、家族と同居してるかどうかによっても違いますよね。例えばカミングアウトしておもわしくない反応が返ってきた場合、その瞬間、自分の帰るところがなくなってしまうわけですから。経済的にも家族に頼っている人は慎重になったほうがいいと思います。

でも、何が一番大事かっていうと、カミングアウトすることじゃなくて、自分が気持ちよく生きられることが大切ですよね。隠し事してるような嫌な気分になったり、「そろそろ結婚しないの?」みたいな話に合わせるのが辛かったりするからカミングアウトするということはあるでしょうけど、無理してすることはないんです。別に自分が嘘ついてるわけじゃないし、自分から言わなきゃ異性愛者扱いされるってことのほうがおかしいんですから。

孤独感に苦しんでいるのは自分だけじゃないと気付いたことで、世界と自分がつながった

――周囲への応対をはじめ、「みんなと違う」から生き辛いと感じてる人に、どんなことを発信したいですか?

「誰もがみんなと違うんだよ」ってことですね。「自分だけみんなと違うんだ」って考え始めると、自分vsみんなみたいな世界になっちゃうわけですよ。でも私は、「自分vs世界という孤立感を抱いている点においてこそ、人はみんな同じなんだ」ってことに気付いたんです。例えば私はレズビアンだっていうことで孤立感を抱いてましたけど、例えばハーフだとか、シングルマザー家庭に育ったとか、発達障害だとかを理由にして孤立を感じている人たちが、レズビアン以外にもいるんだってことに気付いたんです。そのことに気付いたことで、自分と世界がつながった感じがしたんです。

――そこから人生が変わりましたか?

変わりましたね。それまでは本当に人が嫌いで、しゃべることなんて無駄だと思ってたんです。どんなに言葉を重ねても絶対に分かりあえない、誰とも分かりあうことなんかできっこないし、みんな孤独なんだ、人としゃべるくらいなら本でも読んだほうがいい、1分でも長くバイトしたほうがいいって思ってました。

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――奥さまとの出会いによっても変わりましたか?

大きく変わりましたね。やっと完全体になったって感じ。今まで半分の自分で生きてきて、何かのパーツが足りない気がしてたのが、妻と出会ったことでパシューン! って合わさって完全体になった感じです(笑)

ちなみに、妻に会う前にもアプローチをかけた女性はいたんですけど、いつもフラれてばかりでした。今考えるとそうだろうなって思いますよ。だって痛かったですもん、私。それまで男の人としか付き合ったことがなかったんで、本物のレズビアンになるためには女の子と付き合わないといけない、レズビアンだっていう証明が得られないと思って声掛けまくってたんです。「私はビアン寄りのバイでね」とか業界用語重ねて一生懸命自分のこと説明して、「私はレズビアンよ。レズビアンである私を認めて」っていうオーラを発してました。

でも妻との間には言葉は要らなかったんです。「私のことを知って」っていう言葉が一切出てこなくて。彼女がステキだっていう、ただそれだけでよかったんです。

――まさに運命の出会いですね! ところで、セクシャルマイノリティと呼ばれる方々がどういった場所で恋愛相手を見付けているかについては、牧村さんの著書『百合のリアル』でも解説されていましたが、この本はどんな人に読んでほしいですか?

「今日から社会人」だとか「私はレズビアン」だとか、特定の言葉に自分を合わせないといけない気がしているすべての人です。人間って、1人ひとりを言葉でカテゴライズしがちですが、カテゴライズされたことによって息苦しさを感じたり、自分だけが人と違う気がしたりするものです。でも、そんなことで苦しまなくていいんだよということを、具体的にレズビアンという例を出すことで表現したのがこの本なので、言葉によるカテゴライズに違和感を感じている方をはじめ、多くの方に読んでもらえたらうれしいですね。

――最後に、今後の目標を教えてください。

数十年後の未来で、妻と一緒におばあちゃんになった私が若い女の子カップルに「おばあちゃんは昔、LGBTに関するコラムを書いたり、レズビアンとしてテレビでお話したりしてたんだよ」って話したら、「LGBTって何? レズビアンって何?」って答えが返ってきたらうれしいなって思ってるんです。LGBTレズビアンが悪い言葉だとか、差別用語だからなくせとは言いません。でも、一旦その言葉を通ったり、自分がレズビアンであることを受け入れるステップを踏んだりしなくても、同性同士が普通に付き合える世の中になったらいいなと思っています。そんな世界が来ることを夢見ながら、今後も妻と二人で仲良く暮らしていきたいですね。

LGBTについての基礎知識をストーリー仕立てでまとめた牧村さんの著書『百合のリアル』は、
第二章までネットで試し読みできます。
http://ji-sedai.jp/book/publication/yuri.html

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【牧村朝子】

タレント、文筆家。2010年、ミス日本ファイナリスト選出をきっかけに、杉本彩が社長を務める芸能事務所「オフィス彩」に所属。2013年、フランスでの同性婚法制化とともに、かねてより婚約していたフランス人女性と結婚。現在はフランスを拠点に、各種媒体への執筆・出演を続けている。夢は「幸せそうな女の子カップルにレズビアンって何?って言われること」。著書『百合のリアル』(星海社新書)、マンガ監修『同居人の美少女がレズビアンだった件』(イースト・プレス)。ツイッター @makimuuuuuu

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松本玲子

Written by 松本玲子

各種雑誌、書籍、web媒体で編集者・ライターとして活動する傍ら、TVCMナレーションやCMソング歌唱、音楽制作なども手掛けている。また、プログレッシブ・ロックバンドswaragaのボーカルとしても活動中。
松本玲子

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